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大人になった
携帯電話のアラームが、ユリアに朝が来たのを告げていた。 カーテンから漏れる光の強さにうなって、彼女は窓から顔を出す。なにかが落ちてきそうなほど、空は一面平らに青で塗りつくされていた。そこにだれも..
(2010/01/01 19:42)
骰子の一擲
彼の指先から無数の映像が流れてくる。暗い宇宙、青い海、深い森、風そよぐ草原、人むせぶ都会、暑い砂セイジは彼女の額から手をはなし、その重さを量るように空に向かって両腕をかざした。漠、宙に浮いた虚空。ど..
(2009/10/23 22:16)
終わらない杭打ち
「成人おめでとう」ユリアが電話をかけるなり、兄は言った。 「私は大人になりたくないの。そうするためには逃げなくちゃならない」 ユリアの声はすでに悲鳴に近かった。兄は抑揚のない声で、彼女の心に直接..
(2009/07/07 9:57)
リングチェインドアイランド
階段をのぼっていく足取りは、まるでメトロノームのように正確だった。男はそのリズムに陶酔しそうになるが、大きく音を立てることはできない。だれにも気付かれるわけにはいかないのだ。だれにも気付かれずにそこ..
(2009/06/07 20:08)
夜の前にひざまずく
ただし、いまだから断言できることだけれど、彼の想いは一片の淀みもなく純粋だったがために、かえって誤解を招く要因にもなっていた。最初はただのひねくれものなのかと思ったが、彼はあまり多くの手段を知らない..
(2009/04/30 19:59)
海の水晶
ユリアはパソコンの電源を入れる。真っ黒い画面がオレンジの壁紙に入れ替わる。家出に必要なものを検索する。着替え、洗面・化粧用具、身分証明書、財布に携帯電話、護身用のナイフと自宅のカギ。セイジが言ったとお..
(2009/03/31 21:30)
幻覚の限界、縮退していく空間
「いつごろ、こっちに来るんだい?」 家出のことは、日ごろから兄に相談していた。そろそろ頃合とみて連絡してきたのだろう。一度だけ訪れた兄の部屋の光景を思い出す。生活はだらしない人だが、動物的な勘だけ..
(2009/02/01 21:11)
戦う者
ご無沙汰です。 新年あけてから、しばらくテーマを探してうろついてましたが、 やっといまの自分が見つめるべきものが茫洋と浮かび上がってきたような気がしています。 子曰く、 「十有五にして..
(2009/02/01 21:06)
羊が完全管理する世界
「で、肝心の、死者と自分との関わりはどうなるわけ?」 「私の自己同一性を担保しているのは、ここにはいないだれか、つまり、死者ということだよ」 「ちょっと待って、死んでる人がどうして現在行きている人..
(2008/11/24 14:58)
やましい召還者
「つまり、他人に対する欲望によってはじめて、他人は他人として顕現するってこと?」 「それは自分と他人を区別するひとつの方法だよ。僕は他人を求める、その行為自体によって、はじめて他人というものを意識し..
(2008/11/11 22:32)
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