宮田篤のことばの壁日記

10月1日 あらうんど80年代・追記/折れ線クラブ

あらうんど80年代では大きな微分帖を使って、お客さんや他の微分帖を知らない参加者に説明をしてみました。ちょっとややこしい微分帖のルールは、対面して実物を見せながら話すと割と伝わるのですが、客前で大勢に向かって説明するのはほとんどはじめてで、なかなかむつかしいのです。
そこで「大きな微分帖」をつくって、微分帖に参加したふかさわ君、えつお君、えぶちさん、きし本くんに前に出て来てもらって、どのように作業が進むのか、できるだけイメージしやすいように工夫してみました。急に思いついて、さらにマイクも持っていたりして、大変だったのですが、ある程度の人には伝わったようです。伝わらなかったけど気になった人にもフリータイムでフォローできていたとしたらもっといいのですが、とにかく、その場は「微分って高校のとき分かんなかったなぁ」とか深刻にならずに笑いながら聞いてもらえたと思います。
ただ、ルールを伝えることに集中してしまって、微分帖について考えたり感じたりしたことまで話せなかったので、これから機会があればそこまで話してみたいと思いました。でもあんまりそういう機会はないので、今日は以前書いた物に加筆修正して、とりあえずそれでいいことにします。
「あらうんど80年代」全体についていうと、微分帖をもっと色んな人とやりたかったのですが、90分くらいで4〜5冊出来たからそれでもうめいっぱいでした。他に参加した人はどんな感じだったのかなぁ。あとは参加者それぞれを紹介する時間のほかに、参加者同士をつなげる時間があってもよかったのかもしれないと思いましたが、その場でぼんやり思っていたのでもっと対処できればよかったです。でも他の人の発表が面白いので見てしまった。
こういう場所を用意してくれた即興からめーる団、演劇百貨店のたなかさん、門仲天井ホールさんに感謝します。搬出の時にしたこたつピアノも面白かった。カバーをかけながらピアノをひくだけなんだけど。
ことばの壁
微分帖は色んな人と遊べる本で、一回遊ぶと一冊できます。今まで日本人やタイ人やドイツ人やオーストラリア人やメキシコ人や韓国人と、日本語だったり韓国語だったりタイ語だったり英語だったりして遊びながら作って、1年で300冊くらいできました。
子どもにもタイ人にも説明したら伝わるので、タイ語を訳して英語にして、僕が英語で書いたのをまたタイ語にしてとかで遊べます。子どもなら9才くらいからできるやつがいますが、やろうと思えば何才でもできます。
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つくりかたの話をします。
微分帖の「外側一枚目=新聞でいうと1、2面とテレビ欄のあたりの紙1枚分」がトップバッターの書いたやつです。紙をふたつ折りにして4ページの本をつくり、そこにひとつながりの文章を書きます。それを読んで2番は「内側真ん中に一枚=新聞で言うと3、4面とその反対側の紙1枚分」を入れてその白紙の部分4ページに、できるだけ前後の意味がつながるように書き加えて8ページの本にします。3番がいたら12ページの本にします。だから冒頭とオチは誰かが始めに決めますが、その中で他の人が文をいじくるわけで、そうするとその間が深まったりどうでもよくなったりその手があったかみたいな感じになったりしながら、同時に文章が書かれた本もできあがってゆきます。言い換えると、言葉の構造と本の構造が同時に増えていきます。
2人でも20人でもつくれます。みんなで回していって、2週目からは順番が回ってきた人が、「続ける」か「やめる」かを決めます。「やめる」を誰かが選んだ時点で完成ですが、「続ける」を選んだ人が同時に「やめる」ことはできないので、基本的に「本を書き加えている段階ではいつ完成するのか分からない」ことになります。
よくシュールレアリスムの作文とか新聞記者ゲームとか、いつどこでだれがどうしたゲームみたいなものですねって言われますが、あれは「せーので意味をぶつけて弾けさせる感じ」で、微分帖はひとりずつバトンを渡してみんなで確認しながら意味を増やしたり曲げたり飛ばしたりして「育てるように遊ぶ」のでそこが違うと思っています。
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なまえの話をします。
もともと美文調ということばがあってそれをもじって微分帖と言っています。美文調は「美」しい「文」の「調」子なので、小説とかの文体をほめたりすることばなのかなと思います。そして微分帖は「お話とページを微分していく小さな(簡単な)本」、または意味を「微」に「分」けていく「本(帖)」ということです。
微分帖は繰り返すごとに記述が詳しくなっていくのでそのあたりが微分かなという気がします。そして偶然ここにいた人間で書く、ここでしか書けないことば・文であるという意味で美文調でもあると思います。
美文調をthe elegant prose writing、微分帖をthe differential bookと言って英語でも説明したことがあります。それでなんとなくは伝わりますが、the divisional bookの方が分かるかも知れないと教えてもらったことがあります。
実際に遊ぶとひとりずつがんがん作文をしていくので、そんなに嘘ばかり書けないしと微分帖の中に自分のことをちょこっとだけ書いてくれたりして、でもそれをすぐに次の人が変えてしまって「えーっ」てなったりして、知ってる人も知らない人も不思議な関係になります。
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例えば絵を見たり音楽を聴きにいくときに、入り口で深呼吸をしてそこに来る今日までのことをふっと忘れて楽しむっていうこともありますが、実際は割と少なくない場面で、そこまでのことや帰ってからのことがあたまのスミにありながら目の前のものを見たりして、むしろそれが作品と自分とを結びつけるきっかけになることもあるんじゃないかと思います。
微分帖ではその、あたまのスミにあるものが大活躍することがあります。今日はちょっと寝坊してからここにきたんだ、っていうここまでのことが、大冒険活劇の微分帖を呼び寄せたり、最近気になっていることを書いただけなのに、とってもせつない微分帖ができたり、微分積分がよく相手をする2次方程式のグラフみたいに、どんどん意味がエスカレートしていきます。
by ochakann
(2009/10/02 5:25)
あらうんど80年代
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