映画評論家 兼 弁護士坂和章平の映画日記

人のセックスを笑うな(日本映画・2007年)
日07−296 ★★
<東映試写室>
2007年11月22日鑑賞
2007年11月24日記
刺激的なタイトルと永作博美主演に惹かれて観たが、大きく期待はずれ!原作が八方美人的なら、監督のつくり方や登場人物もあまりに幼稚。そしてみるめ君のだらしなさもここに極まれり・・・。すると、私の大好きな永作博美扮するユリちゃんのファムファタールぶりは・・・?
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監督:井口奈己
原作:山崎ナオコーラ『人のセックスを笑うな』(河出書房新社刊)
ユリ(美術学校の非常勤講師)/永作博美
みるめ(美術学校生)/松山ケンイチ
えんちゃん(美術学校生)/蒼井優
堂本(美術学校生)/忍成修吾
猪熊さん(ユリの夫)/あがた森魚
2007年・日本映画・137分
配給/東京テアトル 宣伝/オフィス・リブラ
<永作博美の主演!>
私の大好きな永作博美の主演と、いかにも刺激的なタイトルに惹かれて観にいったが、途中からその出来の悪さにガッカリ。
<原作は?監督は?>
プレスシートによれば、同タイトルの原作で第41回文藝賞を受賞しデビューした山崎ナオコーラ氏は、選考委員の角田光代氏、斎藤美奈子氏、高橋源一郎氏、田中康夫氏から「思わず嫉妬したくなる程の才能」などと絶賛されたとのこと。また井口奈己監督は、2004年、『犬猫』のリメイクで商業映画デビューし、第22回トリノ国際映画祭で審査員特別賞、国際批評家連盟賞、最優秀脚本特別賞を受賞。山田宏一、蓮實重彦ら著名な映画評論家からも絶賛を受け、女性初の日本映画監督協会新人賞を受賞したとのこと。
もちろん、私はそんな原作を読んだことはないが、山口ナオコーラ氏のコメントを読むと、いかにも八方美人的で、刺激的なタイトルにふさわしい問題提起をしているとは到底思えない。また井口奈己監督の映像も間延びしたものばかりだし、ユリ(永作博美)とみるめ(松山ケンイチ)との会話も、みるめとえんちゃん(蒼井優)との会話もあまりに幼稚。若者のレベルも邦画のレベルもこんなに落ちてしまったの、と唸ってしまったが・・・。
<若い男の欲望は・・・?>
とりわけ現実離れしておりバカバカしいと思ったのは、みるめとユリのセックスシーン。キスシーンばかりをやけに濃厚に(?)見せるが、それ以上見せると「若い子からおばさんまでいろいろな人が映画を観るだろう」との原作者の思惑に反するためか、「やりたい盛り」の若い男らしいセックスの欲望丸出しの姿を松山ケンイチは一切見せないまま。しかし、こんなの丸っきりインチキでは・・・?
<今ドキの若者は・・・?>
ユリが人妻だった、またユリが去っていった。そんなショックの中でケイタイをかけたい自分の気持を抑えるため、ケイタイを針金でぐるぐる巻きにして使えないようにしているみるめの姿を見て、「バカじゃないの!」とえんちゃんが言い放ったが、私も全く同感。「話したければ、話したら!」「会いたければ、会いに行けば!」とえんちゃんと同様に私もそう思うのだが、傷つくことを恐れる今ドキの若者たちは・・・?
<日本版ファムファタールは、笑止千万!>
@「永作さんを、今まで見たことのないファムファタールに」、A「そんな永作さんに振り回される松山さんを、史上最強にかわいく撮る!」と、井口監督はプレスシートでのたまっている。しかし私には、@の発言は、ファムファタールの意味を十分理解していないか、あるいは理解していても日本版のほどほどのファムファタールのレベルに落としてしまったとしか考えられず、笑止千万。またAは、19歳の男をかわいく撮るとは一体どういう神経・・・?まさに、平和ボケ日本ここに極まれりとしか考えられない感覚だが・・・。
<思わずスサンネ・ビア監督と対比>
私は11月14日に、1960年生まれのデンマークの女性監督スサンネ・ビアの『アフター・ウェディング』(06年)と『ある愛の風景』(04年)を観て、その問題提起性、構成力のすばらしさ、映像の斬新さにビックリした。その直後だけに、この映画のつまらなさが一層クッキリと・・・。大衆受けを狙って垂れ流される原作本を安易にスクリーン上に移し替えただけの邦画には、もううんざり!
2007(平成19)年11月24日記
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