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箪笥のへそくり
藍與黒 (Blue and the Black) 

1966年、香港(邵氏)。陶秦監督。林黛、關山、于倩、顧媚、高寶樹、金漢主演。

西本正まつり[外部リンク](仮名)」勝手に協賛企画第2弾(第1弾はこちら[外部リンク])。
林黛の遺作です。
日中戦争下の悲恋を描いたメロドラマにして、実は抗日映画という1本[外部リンク]。
1962年の第1回金馬奨作品賞を受賞した電懋の大作『星星 月亮 太陽[外部リンク]』(1961年、易文監督)に触発された邵逸夫(ランラン・ショウ)が、

うちでも、こんな映画、つくるでー!!!

と宣言(したかどうかは不明だけど)、邵氏の金看板である林黛主演で撮影に入りましたが、製作途中の1964年7月に林黛が急逝、慌ててそっくりさん(杜蝶)を探し出し、どうにか完成にこぎつけたという曰くつきの映画でもあります。
前後編合わせた上映時間が4時間近くになるという破格の作品で、第13回アジア映画祭(1966年)で作品賞、監督賞、脚本賞、カラー撮影賞、韓国国務総理特別賞を受賞、林黛には特別紀念賞が贈られました。

邵逸夫がお手本にしたという『星星 月亮 太陽』も日中戦争下の中国が舞台で、やや抗日色はあるものの、日本兵は一切出てこないのに対して、本作ではいかにも狡猾そうなちょび髭の日本兵が「おい!こら!」と叫んだり、中国の民間人を銃剣で刺し殺したり(!)していました。
ま、『梅花』(1975年、台湾)みたいにあからさまな抗日映画ではありませんでしたけれど。
あ、でも、いきなり民間人を殺害しちゃうところなんざ、十分あからさまですね。
戦時中、乗っていた船が日本軍の爆撃に遭って沈没、命からがら泳いで逃げたという陸運濤(電懋のオーナー)が敢えて抗日色を押えた映画を作ったのに対し、日本軍と良好な関係を保っていたと言われる(本人は否定)邵逸夫がこういう映画を作っているあたりに、なにやら深遠なものを感じますです。

物語の舞台は、日中戦争下の天津。
孤児として生まれた張醒亞(關山)と唐h(林黛)は、互いに惹かれますが、養家の反対に遭い、その仲を引き裂かれてしまいます。
唐hは家を出て看護婦として働き出すものの、好色な院長の餌食となり、結局病院も辞め、ダンスホールの歌手として生計を立てるようになります。
一方、醒亞は天津を脱出して国府軍に入隊、日本軍と戦う決意を固めますが、どうしても唐hのことが忘れられず、彼女を一緒に連れて行こうとします。
しかし、醒亞の今後を思った唐hは密かに身を引き、失意の醒亞は1人天津を去り、国府軍にその身を投じるのでした。

と、ここまでが前編。

女性映画の名手だった陶秦監督らしく、手馴れた演出で見せますが、『星星 月亮 太陽』と比べると、ストーリーが起伏に乏しい感じがしました。
後編からは、もっと「山あり谷あり」な展開になるのかも知れませんが。
それに、看護婦を辞めた唐hが、ダンスホールの歌手として働くようになるという設定も、いささか唐突感が否めません。
それ以前に、「唐hは歌が得意」みたいな描写があれば、少しは納得するんですが、食うに困ってのこととはいえ、歌というものはやはり特殊技術ですからねえ。
ただ、「陶秦監督、林黛&關山のメロドラマで、林黛が歌手」という設定から、観客は1961年の名作『不了情』をすぐさま思い出すでしょうから、その意味では効果大と言えるのかも知れません。

ところでこの作品、西本さん(賀蘭山)の他にも、董紹詠、洪兼雲、劉岐の名前が「撮影」としてクレジットされていました。
製作年数が長きに亘ったことや、台湾ロケと思われる箇所があること、また、風景のみを延々と映し出す部分があることからみて、おそらく、林黛の存命中は西本さんが担当、その後残りの部分を董紹詠が引継ぎ、そして洪兼雲と劉岐がサポートとして入ったのではないかと思われます(カラー撮影賞は、西本さんと董紹詠が受賞)。
西本さんは、1961年以降、林黛の殆どの作品で撮影を担当していますから、よほど林黛に気に入られていたのだと思います。
そう考えると、今回の回顧上映で林黛の映画を上映しないのは、返す返すも残念なことです。

以下は、ちょっとしたコネタ。

本作で2人を支える醒亞の従姉を演じ、第5回金馬奨助演女優賞を受賞したのが于倩(下の写真。向かって右)。後にセクシー路線にシフトチェンジしますが、ここでは落ち着いたいい演技を見せていました。
『花様年華』のエンドタイトルで、「鳴謝」のところに枠つきで現われる「于倩」という名前がありますが、あれが彼女のことです。2000年の4月、惜しくもこの世を去りました。

映画の冒頭、林黛と關山が出会った後、2人が恋に落ちるきっかけとなったスケート場の場面に移りますが、ここで早くもそっくりさん(杜蝶)が登場します。
下の写真が、そっくりさん。似てるけど、でもどこか違いますね。

ダンスホールの場面。名曲『痴痴地等』を切々と歌い上げる林黛(歌は静?の吹替)を見つめる観衆の中に、またしてもいました!『香港クレージー作戦』で犬塚弘の恋人をやっていた女優さん(下の写真)。嗚呼、君の名は・・・・。

ちなみに、台湾映画『搭錯車』(1983年)の露天映画上映場面で使われていたのが、本作のこの件でした。いかにも国府軍の老兵たちが観そうな映画です。
(後編につづく)

おまけ:まだまだスマートだった金漢。畢國智(ケネス・ビー)監督のお父さんです。


by sen1818
(2004/11/21 21:47)
映画

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